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伴走支援は本当に機能しているのか?“経歴豊富”な支援者の落とし穴

はじめに

「伴走支援」という言葉が、近年の中小企業支援界隈で流行語のように扱われている。コーチング、傾聴、信頼構築——美しい言葉が並び、資格保有者の多くが口を揃えて「伴走支援しています」と語る。しかし、果たしてその“伴走”は本当にお客様の隣を走れているのだろうか?

私自身、伴走支援を謳う一人でありながら、日々の現場で「これは本当に意味があるのか」と自問することが多い。本記事では、そうした現場の感覚から出発し、「伴走支援」の美名に隠された問題点と矛盾を掘り下げていきたい。

伴走支援の理想像とその魅力

中小企業庁などが推進する「伴走型支援」は、単なる助言やレポート提出で終わらず、お客様の日々の経営課題に寄り添い、継続的に支援を行うことを理想とする。

理論上の魅力は明らかだ

  • 個別最適化された支援ができる
  • 継続的な関与により信頼関係が深まる
  • 潜在課題の早期発見が可能
  • 経営者の精神的負担も軽減できる

一見すると完璧に思えるこの支援モデル。しかし、実態を見ていくと、そこには“支援する側の論理”が優先され、現場との乖離が生まれているケースも多い。

「伴走支援」を名乗ることの危うさ

中小企業診断士を中心とした支援者のなかには、「伴走支援」という言葉を使うこと自体が、ある種のブランド化してしまっている傾向がある。

  • 誰もが同じ言葉を使っていることで差別化ができない
  • 手法が定義されておらず、内容にばらつきが大きい
  • 経営者側も支援の質を判断できず、言葉の印象で評価しがち

さらに、「年金までのカウントダウンのように契約を続ける嘱託診断士」でも、“毎月訪問して話を聞いている”という形式を満たせば「伴走支援をしている」と言えてしまう。

この曖昧さが、支援の実効性を曇らせている最大の要因ではないだろうか。

実務経験のない“専門家”の存在

コーチングやメンタリング、ファシリテーションといった支援技法は、確かに理論上は有効なものだ。しかし、それを扱う側に「実務経験」がなければ、その効果は極めて限定的となる。

たとえば、

  • 資金繰りに悩む経営者に対して、資金調達の現場経験もない支援者が何を語れるのか?
  • 従業員トラブルに直面したオーナーに、従業員を雇ったことのない支援者がどう寄り添えるのか?

私は繰り返しこの問いにぶつかってきた。中小企業経営の現実は、教科書通りではない。血が通い、汗が滲む現場に触れたことのない人間が、どれだけ“優しい言葉”を並べても、それは支援ではなく、慰めや形式で終わってしまう。

形式的伴走と中小企業の“時間の浪費”

形式的な伴走支援の最大の被害者は、実は中小企業の経営者自身である。

・時間をかけて話を聞いてもらっても、具体的な打ち手が出てこない ・助言はあるが、実行可能性が低い ・形式的な訪問が続くだけで、現場に変化がない

経営者にとって、最も貴重なのは“時間”だ。この貴重なリソースを、実効性の乏しい支援に費やしてしまうことは、本来の経営改善のチャンスを逸することにもつながりかねない。

本当に必要なのは、“経験者の伴走”

この問題の根本にあるのは、資格や経歴に頼った「経歴豊富な支援者」という幻想である。本当に求められているのは、「経営を知っている」「実行の泥を知っている」支援者だ。

私は、経営者として自分の会社を持ち、自分でお金を回し、人を雇い、事業を形にしてきた。その過程で得たものは、教科書からは絶対に得られない“現場の重さ”だ。

本当の伴走支援とは、そうした現場の知見を血肉にした人間が、等身大の目線で並走することではないだろうか。


結びに代えて

私は、すべての診断士や支援者が「実務を経験すべきだ」と主張したいわけではない。しかし、「実務を知らずに支援者を名乗ること」のリスクと限界については、もっと真剣に向き合うべきだと思っている。

自らの未熟さと向き合いながら、経験と反省を糧にして、少しずつでも“真の伴走者”に近づいていく。その過程こそが、支援者としての信頼を築くのではないか。

「下手くその上級者への道のりは、己が下手さを知りて一歩目」——この言葉を胸に、私自身、今日も学び続けている。


著者プロフィール

独立中小企業診断士。信用金庫勤務を経て独立。複数の企業と顧問契約を結び、金融・経営戦略の現場で“実務から始まる支援”を実践中。

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